さかのぼること、一昨日……夕暮れ時の酒場は賑わいを見せていた。
「なんだてめぇ」
「文句あんのか?」
賑わいから一転、険悪な雰囲気が漂い始める。
酒の席ではよくある事だが、それに巻き込まれる客たちはたまったものではない。
いつ暴れ出すのかとヒヤヒヤしながら、皆はその光景を眺めていた。
「黙って聞いてりゃ、いい加減なコトばっか言いやがって」
巻き毛の男は呂律(ろれつ)はしっかりしているものの、立ち上がるとフラフラしている。
「ああ? オレは本当のコト言ったまれらろ」
酒でいまひとつ呂律の回らない馬面(うまづら)の男も立ち上がる。
互いに立ち上がり、テーブルを挟んで睨み合う。
そんな彼らのテーブルの上には、コップがいくつも乱雑に乗せられていた。
「いい根性してるじゃねぇか。ぶちのめしてやる」
「なんらと? それはこっちのセリフだ」