「体育祭の日、最後に圭也と話したのは怜悧だったよね?」
「うん。」
嫌な予感がする。
「怜悧、希夜のところに行って事情を説明して連れてきてもらえないかな?」
「えぇ⁉」
やっぱり。
あんま関わりたくないのに・・・
だけど、体育祭の時、直接圭也と接したのは私だけだ。
又聞きになるより私が説明した方がいいのだろう。
「ダメかな?」
「・・・」
中々行くと言い出せず、言葉を詰まらせる。
説明するのはまだしも、私に希夜を連れてこれるだろうか?
そんな疑問が浮かぶ。
「あんな頑なな、圭也は初めてだった。俺達だけじゃ難しいと思う。」
「俺に希夜連れてこれるかな?」
「いや、怜悧だから、希夜を説得できるって思って頼んだんだよ?」
何を根拠に。
架衣斗の中では私達はどんな仲に見えているのだろう。
最近気づいたが、私が希夜にビビりすぎて自然と主従関係が出来上がってしまっているというのに。
架衣斗を困らせたくないのだけど、せめて誰か一緒に・・・
「僕が一緒についていく。」
「やめとけ。」
藤原さんが真剣な顔で光を制した。
私もそう思った。
光が付いてきたら、喧嘩になるだけだ。
希夜の嫌そうな顔が目に浮かぶ。
「分かった。行ってくる。」
がっくりと肩を落とし、私は渋々了承した。
光に付いて来られるよりははるかに一人の方がマシだろう。
光は納得のいかない顔をしていたが、無視して希夜を探すため部屋を後にする。
後ろ手に架衣斗の指示を出す声が聞こえる。
それぞれが圭也を連れ戻すため動き出したのだった。
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