くるみちゃんを真ん中に挟んで二人で抱きながら、ゴールへ走る。
後数メートルでゴールだというのに圭也がしょっちゅう足がもつれて転びそうになったり、違う方向に身体が行きそうになっている。
その為、希夜はいったん立ち止まりとうとうくるみちゃんを取り上げた。
くるみちゃんに何かあってからでは遅い。
希夜の判断は懸命だ。
以前、希夜が言っていたのはこういうことだったんだな。
そうとうな運動音痴のようだ。
「なんでだよっ‼」
「君がそんなだからいけないんでしょ。このままじゃそのデカい図体に二人とも潰される。」
「そ、そんなことしねーよ‼てか、くるみはともかく何で希夜が潰されるんだよ‼」
何やら口喧嘩が始まった。
圭也は納得いかないらしい。
一緒にゴールするんだとごねている。
こうなったら圭也は意外と頑固だ。
鬼のような形相だった希夜が、深い諦めにも似た表情になった。
くるみちゃんを右手で抱えなおし、左手を圭也に向ける。
圭也は一瞬驚いた顔をしたが、迷いなくその手を取った。
その光景にまたしても笑いが沸き起こる。
「ゴールは目前です‼頑張ってください‼」
頑張れーーと会場からはたくさんの声援が飛ぶ。
みんなが圭也達を応援していた。
パーンという圭也達のゴールを知らせる銃声が響いた。
「赤チーム、会場全体の声援を受けながらゴールしましたー‼では、今回のお題は何だったのでしょう?藍咲くん読み上げてください。」
「えと・・・宝物と親友でーっす‼」
満面の笑みで圭也が答える。
くるみちゃんは満足そうに圭也にひっつき、希夜はそっぽを向いている。
「とても可愛い宝物と頼りがいのある親友ですね。順位は最下位となってしまいましたが、とても微笑ましいものを見せて頂きました‼これからも宝物と親友を大切にして下さいね~」
借り物競争は暖かい拍手によって締めくくられた。
.

