突然の声に私たちは身を固くして辺りを見回す。
まさかこんな遅い時間に、しかもこんな所に人が来るなんてないと高を括(クク)っていた。
ドクドクと踊り出す心臓は静まりそうもない。
もう少し静かにしていればとか、別な場所で隠れていればとか後悔が押し寄せる。
隣の鈴音も真っ青な顔をしていた。
遠く離れた明りの灯った玄関から、寝室に繋がる小道から砂利を踏みしめる音が聞こえる。
その音が近づくにつれ、均等に植えられた細い木の間から人影が目に入る。
逆光でその顔を確かめることができないが、嫌な予感しかしない。
ここ数日、Aクラスの皆で生活し、学校生活を送って気づいた事。
それは、Aクラスは比較的安全で過ごしやすいということだ。
クラス全体の雰囲気がなんというか、穏やかでのんびりした感じで、皆、人のいい人たちばかりだ。
そんな中、異彩な存在感を放っているのが私たちグループだった。
個性が強く、一筋縄ではいかない、癖のある連中。
鮫島のお墨付きだ。
そのなかでも奴は別格だ。
もしここに現れるとしたら、奴しかいない気がする。
「そこにいるのはわかっている。」
この声…
やっぱり間違いない。
ホントはこのままやり過ごせるものなら、やり過ごしたい。
見つからない可能性だってあるわけだし。
だけど、二人で見つかることはどうしても避けたかった。
鈴音も希夜に目をつけられている一人だし、そもそもDクラスの生徒がこんなところにいると知ったらただじゃすまなさそうだ。
なんとしてものり切らなければ。
私が行くしかない‼
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