夜の静けさと、澄んだ冷たい空気に嫌気が差してきたころ、鈴音が口を開いた。


「まだかな・・・」


「今夕食の時間だから、もう少しかかるかもね。」


私達はこそこそと草むらに身を潜めていた。

目の前にはパステルカラーのAクラスの寮。
しかも私と圭也の寝室の前だというのに、まだ入れずじまいだった。


なぜこんなところにいるのかというと遡(サカノボ)ること1時間前、寮の前でのこと・・・




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「つきましたね。」


「怜悧、鈴音くんを頼んだよ。」


「了解‼」


架衣斗の声に気合を入れて返事を返す。
ここには希夜も田西さんもいる。

失敗は許されない。


鈴音を私達の部屋に入れたいのだが、他のクラスの生徒が堂々と入るわけにはいかない。
だから、あらかじめ歩きながら簡単な計画を立てていたのだ。
私達の作戦はこうだ。


私と鈴音以外のみんなは寮に入り、怪しまれないように普段どうり過ごす。
圭也だけはまず部屋に戻り、寮の窓のカギを開け、そのままいつものように夕食をとる。
そして、私たちはスキをうかがって部屋に入るという寸法。


はじめは鈴音だけ外で待っていてもらう予定だったが、どうしても1人は嫌だというので怜悧も残ることになった。

ここまでは計画通り。


だが1つだけ成し遂げられていないことがある。


圭也がいつまでたっても部屋のカギを開けに来ないのだ。

程なくして気づいてしまった。


圭也はカギの事を忘れ、夕食をとってるのではないかと・・・

あのアホんだらのことだ。
そうに違いない。


そして現在に至る、というわけだ。


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