わからないよ――。
「帰って…」
「違うんだイルサ。俺は、」
「帰ってよぉ…っ」
迫力も何もない弱々しい声だったけど、それでも彼はナイフで刺されたみたいに痛そうな顔をした。
隠すことなんて何もないと思ってた。
だから打ち明けたのに。
ラースを、信じてたのに。
激しく降る雨が開け放した窓から入って来て、部屋を濡らす。
窓枠に登っていたラースも、濡れていく。
おひさまの光が、
消える。
「…バイバイ、イルサ」
またね、でもまた明日でもなく、一番残酷な挨拶を残して。
彼は雨の中を去って行った。
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