散々迷った末に、女の子はおそるおそる口を開きます。
「い、イルサ」
「イイルサ?」
「違うっ、イルサ」
危うく間違った名前を覚えられそうになってしまったものだから、イルサも必死です。
「イルサかぁ。なんか、いい名前だな」
ラースはあまり上手に言葉を使うことができません。
だからこのとき彼が言ったことはあやふやで、受け取り方によっては出まかせのお世辞だと思われてもしかたなかったのです。
だけどイルサはうれしい気持ちでいっぱいでした。
彼の言葉はつたなくても、彼の笑顔は間違いなく心からのもので。
それは彼の言語力の無さをも補ってくれていました。


