ヤンはアタシが頼んだようにアタシの頭を撫でてくれた。
ちょっとヤンの顔が赤くなってる。
「落ち着いた?」
「うん」
「オフィスに行くよ」
「何で?」
「チクりに行かないと」
アタシの身体は震えだした。
「い、嫌ぁ…。絶対に仕返しされる…!」
ヤンはアタシの両肩に両手を置いて、真っ直ぐな目でアタシの目を合わせながら、言った。
「僕を信じろ。彼はそれなりの処置が必要だ。オフィスにいる人間なら、何とかしてくれる」
「う、うん。」
ヤンにあんなに見つめられたのもあるけど、緊張して、何を言ってるのか、分からなかったけど、とりあえず、返事しておいた。
「僕は女に乱暴なコトはしない。約束する」
「あ、ありがとう」
アタシはオフィスに着くまでヤンにぴったりくっついた。
ここのELSの所長のところに着いた。
ここのELSのオフィスって女の人、多いんだよね。
会計士さんも所長さんも、ヨーロッパ系アメリカ人で女の人だし。
「前、ご飯食べてたら聞いたんだけど、あの屑野朗のコトで会議があったみたいでさ、フランスのあのプライドの高い女の子も、ロシアの女の人も、トルコの気の強い女の人も、イランの女の人も、ドイツのあの自信満々な女の子もセクハラで困ってるって聞いた」
「へ、へぇ…」
アイツ、手を出しすぎだろ。
「友達の彼女の日本人の女の人もセクハラされたって聞いたし、ブラジル人の彼女がいる友達も、同じこと言ってた」
所長さんが笑顔で挨拶してくれた。
「ハァ~イ、美月、今日はどうしたの?あら?ヤンもいたの?」
「あ、はい。実は、あのバカのコトで相談があって…」
「わかった。中に入って」
と所長さんに言われて、アタシたちは部屋の中に入った。



