「黒山、何でこんなところにいるの?」

「そうだよ。黒ちゃん、今日は日直じゃないでしょ?」

「君達こそ、何してるんだ?」

そこにいたのは、同じクラスの紗江ちゃんの友達だった。

お昼休みに一緒にお弁当を食べていた、相手なのに、違和感を感じた。

「黒山には、関係ないよ~」

「そうそう、黒ちゃん、安心して」

僕はキレそうになりながらも、無理矢理、冷静な態度でいた。

「じゃあ、そのカバンは何?白川さん、今、必死にカバンを探しているんだけど」

「…チッ」

「いこう」

「ちょっと、待って」

「何よ!触んないでよ、このオカマ!」

「白川さんに今後、こんな事しないって約束してくれないか?」

こんな事っていうのは、陰湿なイジメのコト。

紗江ちゃんを困らして、影で嘲笑うこと。

そして、こんな事しないで欲しいのは、僕のせいで紗江ちゃんが傷ついてほしくないからだ。

これはエゴかもしれない。

でも、紗江ちゃんの悲しい顔は見たくない。

“友達から裏切られた”と知ったら、紗江ちゃんは、きっと傷つく。

「す、するわよ!」

その女子たちは僕にカバンを投げつけて、逃げるように走った。