十人十恋-じゅうにんとこい-

「あの夜、『ハルくんには、関係ないよ』って言った後、ハルくんはさ、『関係ないかもしれねーけど、楽になると思うけど』って言ったじゃない」

「ぅん…」

「私って構ってチャンだから、私が強がっても、抱きしめたり、『強がるなよ』って言ってくれる人を期待してたの。そしてハルくんは、私のキモチに答えてくれた」

多分、これはキョーミねー女にも言うかもしれんなー…

でも、そう言ってくれて嬉しいのは確かだ。

「俺は、お前が女らしくなって、そういう弱いトコロをさらけ出してびっくりしたけど、何故か嬉しかった」

「私も嬉しい。でも最低だよね。慰めてくれただけで、男の子を好きになるなんて」

「べ、別に良いと思う…。俺も玲を好きで居たい…っつーキモチ、も、あるからな」

玲は物凄い、とびっきりの笑顔で俺を見た。

「両思いってコト?」

「分かることを言わせる、な!」

「じゃあ、言わない」

その日の放課後、俺は玲と一緒に手を繋いで帰った。

俺は、“恋人繋ぎ”が恥ずかしくて出来なかったので、普通に手を繋いだ。

家の前に着くと、玲は少し寂しそうに「私、これから、お父さんとお母さんのお手伝いがあるから、今日はハルくん家にいけない。ゴメンね」と言って、玲は隣の家に帰った。

家に帰ると、瑛子が制服のままで座っていた。

何か、瑛子の様子がおかしい。

魂が抜けてるみたいだった。

「おい、瑛子どうした?制服脱がねーのか?」

「脱ぐのも面倒臭くなちゃった」

様子がおかしい。

「どうした?何かあったのか?最近、変だぞ?」