5月という月に、俺はあまり良いイメージがない。


若葉が繁り始め、あたたかく、すごしやすい季節ではあるのだけれど。

でも、5月は精神的に、どこか不安になる季節であるし……俺が刺された月でもある。


今では、俺が刺されたのが5月であったことに、何か理由があった気さえしている。




ライが。




――ライは、どうして急に俺のオヤジの話なんて出したのだろう。




考えられるのは、ライの父親あたりが、オヤジの会社の社員で、ススキダの名前を聞いてピンと来た、とか。


子どもの頃、オヤジの会社の社員の子どもと、何人かに会った覚えもある。ほとんど名前も覚えていないけど。




可能性だけでなら、いくらでも考えられるし、正確なところは本人でもなければわからない。