一緒に歩く道の中に俺との記憶を探し出しては“あれは…”とか“この時は…”と話題を振ってくる。


『お前はいつもそうだよな。

手に入れる瞬間、手に入れた瞬間に手放す。

それでいつも周りの反応を見る。

周りの反応を見ながら、手放す事が一番だと考える。

手放した後も周りの反応を見て、これで良かったのだと自分に言い聞かせる。

…そろそろ、その癖、直せよ?』

誠は一段と真剣な眼差しで俺を見てきた。


『…なんだよ、急に』


『俺さ、お前の事…一番の親友だと思ってる。

だから、最後にお前の悪い癖を気付かせてやらないとって思った』


『なんだよ、改まって…てか』

『あの時、お前は俺が悲しそうにしているのを見て、捕まえたカブトムシを放したよな…

そんで俺に捕まえさせた。

あん時、カブトムシを捕まえられたっていう喜びの気持ちと…所詮誰かの手助けがないとカブトムシさえも採れないのだと、お前に見下されてる様にも思えた』