名前を呼ばれるってことは嬉しいけどよ…… ただ呼ばれるのも嫌なんだよ。


「お前って、ネコみたいだよな?」


「…… ネコ?」


大きな瞳が俺を見上げる。


「そっ、ネコ。

こうやって、擦り寄って来たりして…… まるっきりネコだろ」


「ネコは好きだよ?」


まおは犬よりネコ派。 時々「キャットカフェに行きたーい」って騒いでいるくらいだ。

当然、俺もネコの方が好きだ。



「よしよし……」


「…… んっ、もーなにー」


頭を撫でてやった。 嫌がるような事言って、目を細めて喜ぶ。

長く、柔らかい髪が俺の指に絡む。


甘い香りが俺の鼻を刺激する。


シャンプーでも持ってきたのか?

女だから、荷物が多いのはしょうがないけど…… シャンプーまで持ってきたら荷物が多いのは納得だ。

さすがに今回は“おやつ”は持ってこさせなかったけどな。