「それでは、改めて。こんにちは、蘭花。私は小野堤巳。君の兄だよ」


「はぁ……」



 いきなり現われて、いきなり紹介されて、いきなり二人っきりにされて、いきなり『君の兄だよ』だなーんて言われて。



 突然のことが多すぎて、もう何が何だかわからない。

 いや、というかむしろわかりたくない。

 現実逃避上等だよこんにゃろー!



 私は、誰に向けてというわけではなく、心の中でやさぐれた。

 これくらいの現実逃避、してもバチはあたらないだろう。

 バチがあたりそうになったら、あて返してやる。

 へっ。

 千四百年タイムスリップしてきた女をなめるなー!



「小野蘭花です。ええと……他に何を言えばいいのでしょうか?」



 もう、何を言えばいいのかもわからない!

 人間って、わけがわからなくなると、ついつい物事を放置したくなっちゃうものなんだねぇ……。



 他人事のようにしみじみとそう思った。

 けれども、口調は穏やかな、お嬢様を装う。



「そうだね、まずは君の年齢から、かな? いくつなんだい?」


「じゅ、十八になります」