柔らかい陽射しが揺れる5月。高校生最後の年を迎え、誰もがそれぞれの思い描いた未来へと向かおうとしている。進学に向け勉強に励む人、夢を掴もうと必死になっている人、ただ流れに身を任せている人 。
そして 蒼は机にかじりついたまま ノートにひたすらペンを走らせている。何を隠そう 勉強はしていない。『大学進学』なんて考えを起こした訳じゃない。小さい頃から小説や詩を読んだり書いたりする事が大好きだった。その思いは日に日に強くなり、何時しか作家を目指す様になった。そして今、その思いを吐き出すかの様に ただひたすら物語を書いている。
そうしている時が 蒼にとって最高に幸せな時間だった。