凛の母親が少し落ち着いてから、
凛の父親は凛の母親を別室において、
俺のもとへやってきた。
俺はさっきから、
同じ場所にずっと立ち尽くしていた。
「良かったらどうだい?」
凛の父親が両手に
湯気の立つ、熱そうな飲み物を持って、
近くにある2つの椅子を
指さしながら俺に言った。
「…。はい。」
椅子に座って、
凛の父親から紙コップを受け取って、
中身を音を立てずに静かに啜る。
中身はストレートティーで、
思ったよりも熱く、苦かった。
「凛が死んだのは、
君の所為じゃない。」
凛の父親が、
紙コップの中身を見つめながら呟いた。
「すまないな、妻があんなことを言って。
でも、悪気はないんだ。
気にしないでくれ。」
「…大丈夫です。
それに、僕が凛さんを
デートに誘った所為で凛さんは、
死んでしまったんですから。」



