このまま手を離してしまうのも、 俺個人とはとても悲しい。 こんなに君が近くにいるのに。 「…君と話したい。」 ほとんど人のいなくなった教室に 響く自分の声は、 いやなほどに響いた気がした。 「…いいよ。お話しよう?」 俺の掴んだ手を振り払うこともなく、 自分でも変だと思う申し出を 断ることもなく、 君は笑って、 変わることのない優しい声で答えた。