「華雷、待って?」
「どうしたの?」


歩みは止めない。


「圭太はどうなるの?」


華雷の腕を掴む力が強くなる。


「あいつが、大事? だまされちゃだめだよ。あいつのせいで、舞華はお母様からもお父様からも嫌われた。…あいつは、死ぬよ」


「え……?」


死ぬ……?
なんで……?


「僕に電話をかけた時点で、あいつはもう死を覚悟していた」
「どう、して……?」


「お母様との約束を破ったからね。これは、罰だ。あいつは、ヴァンパイアの姫に殺される」


そういい放つ言葉は冷たく、そしてなんだかうれしそうにも聞こえた。


「圭太のところへ、もどろう? 助けなきゃ!」


華雷の手にこもる力がさらに強くなって、爪が皮膚に突き刺さる。


「っ!」


振り向いた彼の顔は怒りに満ちあふれ、目を赤く光らせていた。


「あいつが望んだんだ。ほっとけばいい」
「でも……!」


華雷が掴んでいた私の腕を引っ張る。


彼の顔が数センチという位置まで近づく。


「どうして、君はそうなの? あんなやつほっとけばいいし、あいつだって相手にしなければいい」


あいつっていうのは隼人のこと?


「どうして、そんなこというの? 圭太は家族だし、隼人だって今の家族でしょ?」
「家族? あいつらは、僕達とは違う。惑わされてはダメだよ。君は騙されている。格の低い奴は信じてはいけない、わかったね?」


そう言われ、つい頷きそうになった。
でも、すぐに踏みとどまる。


「わからないの?」
「わからない。華雷がなにをいいたいのか、全然わかんないっ!!」


私は華雷に握られた腕を無理やり引き剥がす。


傷が付いて、血がにじんだ。
でも、かまわなかった。


今きた道を引き返す。


圭太を助けなきゃっ!!