ダルターニの長い一日

ハーリーと分かれた後、シュレイツは真っ直ぐ王室へ向かって、彼の任務を果たしていた。

シュレイツの任務とは、三日に一度の国王との夕食。


それは日頃忙しい国王にとっても唯一の楽しみなのである。


シュレイツとの夕食時だけは、いつも王室の前に待機させられている警備兵も食事の時間になっていて、しばらくは交代の警備もつけないようにしていた。万が一にも、他の者に会話など聴かれないように。


夕食時は決まってダルターニ王国の外れに在る小さな離宮に、国王が隠すように大切に大切に育てている、もう一人の姫君の話題に花を咲かせている。

その離宮に住む姫君の家庭教師と、姫君の日常生活の報告。それがシュレイツの今の仕事だ。

国王は時々食事の手を休めては、シュレイツの話を真剣に聴いている。



「そうか、あんなに嫌っていた野菜スープを全部飲めるようになったか」



そして、シュレイツは王を喜ばせるような言葉を取り入れ、会話に気を配りながら、彼らしい真面目な口調で語っている。



「はい、今度陛下が会いにいらした時には、陛下をびっくりさせるんだ、と言って我慢して、一気に飲みほしているんです」



王は、シュレイツが話した通りのシーンを頭に描いて、想像の中に可愛い姫君の姿を見た。