「きっとこれはシュレイツの馬車の音だ!」



間もなく、予想通り、王家の紋章を正面に飾った馬車の手綱を弾いてシュレイツはやって来た。


シュレイツが馬車から下りると、城の門番の一人が馬の手綱を受け取って、馬車を馬小屋の方へ運んで行く。ハーリーは元気な声を上げてシュレイツの名を呼んだ。



「シュレイツ!」



一瞬、シュレイツは足を止め、声のする方に顔を向け、その視線の向こうにいるハーリーに目を止めた。



「シュレイツ、久しぶり!元気だった?」



シュレイツめがけ走りながら、ハーリーは叫ぶようにシュレイツに語りかけている。しかし、シュレイツは、まるで何事もなかったように、ハーリーを無視し歩き出し、城へと入って行った。



「シュレイツ?」



(どういう事?シュレイツが僕を無視するなんて・・・・・いったい何があったのだろう?)



不思議に思いながらも、ハーリーは再びシュレイツに呼びかけながら、彼の後ろをついて歩いていた。



「シュレイツ、ねえ、シュレイツってば!どうしたのさ?僕せっかく正門までシュレイツを迎えに行ったのに。久しぶりに会ったのに冷たいよっ!」



シュレイツは、しつこく足下に付き纏うハーリーにため息をついて、歩く足を止めた。



「シュレイツ・・・・・」



シュレイツはハーリーに向き直り、蒼いマントを捌き、姿勢を正して礼をした。