ダルターニの長い一日

『そうです。これを王子に見せたくて、先日お暇を使って山に登ってきたんですよ』

『僕の為に?だって、シュレイツ・・・・シュレイツはずっと実家に帰っていなくて、久しぶりに母上に会えるって喜んでいたではないか!今度は何時、暇が取れるか分からないって言うのに』



(しかし、シュレイツは、変わらない優しい笑顔の儘こう言った)



『私にはハーリー王子以上に大切なお方はおりません。王子が野菜も野菜スープも好きになって、何時でもご健康でいられる為ならば、一度位のお暇など惜しくはありません』

『うん・・・、でも、シュレイツの母上は病気なんでしょ?それなのに・・・』

『大丈夫です。今すぐどうこうなるわけではありませんから。それより王子、この野菜はね、実際は野菜の“種”の袋なんだけど、中にあるタネの粒はとても栄養素が高くて万病を防ぐ野菜の王様とまで言われているんだ。この種と朝霧草の葉を混ぜ合わせると、栄養は湯の熱に壊されることなく身体に吸収されるんですよ。
熱を通さない場合は、そのまま食せば栄養が取れるのですが、タネを包む周りの袋の皮は消化しにくいと言われててね、丸呑みしてもそのまま排泄されてしまうので、食しても栄養が吸収されず意味を成さないので、熱さない場合はこのまま噛み潰して食すのです。

原型のままのグリーンパールは簡単に手に入らないから、こうして採って来たんです』


『僕の為に北山脈に上ってまでして、これを採って来てくれたの?こんなに綺麗な、緑色の真珠のような野菜の種を・・・』


(シュレイツは、笑うでもなく、優しい眸で僕を見守るようにただ見ていた)