「時田ー」

「は、はい」


慌てて席を立った拍子に教科書が床へ落下した。


「簡単な文だろ。どうだー?」

「えっと……」


時間を稼ぐため床から教科書を拾い上げようと手を伸ばしかけたけど、右方向から伸びてきた大きな手にさらわれてしまった。

男のくせに色白で指の長い綺麗なそれが、拾い上げた教科書を自分の机の上へと運ぶ。


え。なんで………?

どうしよ………いや、もうダメだ。正直に言おう。聞いてませんでしたって言うしかない。

あきらめかけた、その時だった。

スっとあたしの机の上に戻された教科書。でも開かれているのは、さっきまで開いていたページじゃない。

多分、今やっているとこなんだろうけど………ページの隅に、なにか書き込まれている。