“時田を今日も拉致していい?”
辻之内のノートにはそう書いてあった。
トクンと左胸が波うったのがわかった。ただのざわつきが、一瞬でそれ以上のものになる。ドキドキと鼓動が早まるのを無視できない。
どうしよっ。あたし、きっとまた赤くなってる。
授業中だっていうのに。
なにもこんなにドキドキしなくたっていいのにーっ。
その時トントンってまた机を叩く音がして、のぞき見ると………。
“拉致していい?”の下に、“返事は?”ってあって。そしてそれを指で差して小首を傾げる辻之内。
もとからパッチリした目をもっとパチクリっとさせて、見つめてくる。
もう、なんなのよっ。その子犬みたいな表情は。
「/////」
本当になんだろう?
この感情っていうか、この感覚………うーっ、うまく言い表せない!
うまく頭も働かない。
どうやらあたしは、思考回路のネジを何本も吹っ飛ばしてしまったようだ。



