そしたら、すーっと遠ざかって机の上にコトリと置かれた。

それは、黒猫のマスコット付きのシャープペン。昨日、辻之内の家で使ってたペンだ。


「ありがと」


見上げると、眩いばかりの笑顔を浮かべた彼。


「俺の部屋でみつけたんだ。忘れていったのかな? やっぱり時田のだったんだね」


すう言って、今度は悪戯っぽく笑った。


「ねぇ、ちょっと! 俺の部屋ってなに?」


すかさずリカがつっこんでくる。


「え。い、いや、それは………」


ヤバいっ!!

だけど“俺の部屋”なんて言われたって、あたし入ってないもん。家には行ったけど、あたしが足を踏み入れたのは地下にある書庫だけだもん!