その日の昼休み。
「どーお? 王子様の隣に座った気分は」
タコさんウィンナーが刺さったフォークを握りしめたリカが尋ねてきた。目をクリクリさせて、いかにも興味津々って感じ。
「どお? って訊かれても……」
「王子となんかしゃべった? 」
「ううん、まだなんにも。だいいち話す用なんてないし」
「えー! もったいなぁ~。せっかく、あの辻之内の隣になれたっていうのに」
一時間目後の休み時間からずっとこうだ。
リカは、辻之内 葵のことを訊きたくてたまらないらしい。
「用なんて作ればいいじゃん? 湊だって昨日『ラッキー! 辻之内の隣だ♪』って言ってたくせに。その消極ぶりってばどうした?」
「どうしたって聞かれても、別にどうもしないけど……」
「じゃあなんで?」
「な、なんでって………もうっ、そんな気になるならリカが話しかけたらいいじゃんっ!」
思わず声を荒げたあたしの目の前で、プードルみたいな髪型をしたリカが目を丸くした。
「ちょっと、マジでどうしちゃったの?」
「別にどうもしないってば……」