次の日の朝のこと。
「おはよ」
学校近くの停留所。たった今バスから降りてきたリカに声を掛けた。
「おはよー。ねぇ、もう大丈夫なの?」
「………?
大丈夫って、なにが?」
聞き返すと一瞬、時が止まったリカ。そしてすかさず言った。
「具合だよ、具合! もういいの?」
「………(あ。)」
そうだった!昨日あたしが早退したのは、具合が悪いってことになってたんだ。
「う、うん。もうすっかり良くなったよ」
作り笑いってのは得意じゃないけど、即席で張り付けて見せた。
「なら良かった。そういえば昨日帰る時、玄関で王子と一緒にならなかった?」
ほっとしたのも束の間、その一言に立ち止まる。
「ど、どうして?」
「王子も三時間目が始まる前に帰ったんだよね。教室を出て行ったのって湊が鞄を取りに来る直前だったから」
手に持った鞄をぶんぶん振りながら、あたしの少し前を行くリカ。
「そうなんだー、ふーん……見かけなかったなぁ~」
あたしは嘘をつくのがかなり下手だと思う。でもリカっだって勘が鋭いほうではないらしい。
今日ばかりはそんな友に感謝した。