でも二人の間の距離のことなんて、まったく気にもとめていない様子の彼は解説を続ける。
「目の動きとか、瞳の潤み方を観察して」
「それだけで読まれちゃうの?」
訊き返しても何も答えず目線を落とし。
「どんなこと考えているかなんて具体的にはわからないよ。でも、」
そこでまた動いた瞳が、真っ直ぐに見つめてくる──ってやっぱりこの距離間、近い!
本当に吸い込まれそうかもっ。
「でも、なに?」
続きを促せば、黙ったまま少しだけ顔を傾けた辻之内。
「………?」
顔の角度はそのままで、目線だけを降下させる。その視線の先にあるものはなに?
それは………え。まさか………
──あたしの、くち、びる?
一瞬で動けなくなる。
しかもこの仕草って、だって似てる。
それはまるで、今からキスしちゃうよ?って時の動きにとても似てるから──



