「きゃっ!」


余りにも女らしい声が出てしまった自分にビックリ。

でもそんな声を思わず発してしまったのには理由がある。だって突然、予期せぬ事態に出くわしたんだもん。

“気配” を感じて振り向いたあたしの鼻と程よく高く、でも自己主張をしすぎていない……だけどやっぱり形の整った誰かさんの鼻が危うくぶつかりそうになったんだから。

つまりそのくらいの距離──ただごとではない。


「今日は大丈夫みたいだね?」


長い睫毛を瞬きながら小さくて美しい顔が離れていく。そしてふわりと柔らかい笑みをこぼした。


「え?」


言われた意味がわからなくて聞き返した。


「昨日みたいに赤くなってないから、顔見て安心したよ。帰り大丈夫だった? ちょっと心配してたんだ」

「……心配?」

「うん。時田、走って帰っちゃったからさ。よっぽど具合が悪かったのかなって心配してたんだ。

ごめん。ずっと一緒にいたのに気付かなくて」

「………」