「ったく切符も買えないなんて、どこのお嬢様だよー」


ホームに立ち、林田くんが苦笑する。



「その場所に、辻之内がいるわけだ?」


「それがわかんないの。
もし会えなくても行きたい場所があって……でも、そこの住所も知らないんだけどね」


「はあ~~? どんだけだよーー!」

って、ため息をつく。



だってわかっているのは
“横浜市・K区”ってとこまで。

確か番地のあとには、〇〇ビルって書いてあったと思うけど。

そんなとこまで覚えてないし。



「そんなんでどうするわけ?」

「ごめん……」



林田くんに謝ったって仕様がないんだけど。

他に思いあたらなくて、そう言った。


ちらっと見上げると、視線を泳がせた彼がなぜだか目を逸らして。


「シッカリしてそうに見えて実はそうじゃないとこあるっていう、そのギャップっつーか、そういうとこがまた……」


「……?」


「いや、なんでもないっ」

ってガシガシッと頭を掻いた林田くん。



そこへ、電車が入ってくることを知らせるアナウンスが流れた。