風をきって走る。



行き先を訊かれて“駅”って答えたら、林田くんは『ヨッシャ!!』ってペダルを踏み込んだ。


スカートが捲り上がるけど。

振り落とされないよう彼の背中にしがみつくことのほうが必死で。


そして

どうしてこんなことしてくれるんだろ?

って考えてた。



「俺って矛盾してるよなー。好きな相手の恋の手助けみたいなことして」


「……矛盾っていうかー」


「あっ “バカ”って言いたい?」


「そっ そんなこと言ってないよー」



顔が見えないから、どんな顔してるかはわからない。

一生懸命漕ぎながら、彼は話を続けた。



「本当はこの前さ俺、時田に告ろうと思ってたんだ」