振り向いた彼が、あたしを見る。


そして予想に反した顔をした。


なんともサワヤカにニカッと笑った。



「時田、後ろに乗れよ」


「えっ?」


「いいから。急いでんだろ?」


「でもどうして?」


「さっき辻之内が出て行くとこ、窓から見かけたんだ。

そしたら時田も走って学校から出てきたからさ」


そう言って、ちょっとだけ下を向いた彼。

でもまたすぐに顔を上げて、白い歯を見せて笑った。


「そんな話いいからっ 早く乗って!」


「で、でも…」


「あ゛ーー もうっ!! じれったいな~!

『好きなコを追いかけてくる』って教室飛びだして来たのに、すぐに戻れねーんだから」


と自転車を降りて、あたしの手を強引に引く。


そして顔を赤くして言った。


「恥かかせないでくれよ。だから俺に送らせて?」