「湊?」

「湊ちゃーん?」



心配そうにするリカと困惑顔の吉井。


一瞬だけボーっとしたあたしは、目の前のふたつの顔に再び焦点を合わせた。



そして、

「あたし、これから横浜行ってくる!」

宣言するようにそう言って二人を見る。



リカは、わけがわからないって感じながらも

「うん。話はあとで聞くから気をつけてね、湊」

って、あたしの手を握った。


そして吉井は……


なぜか吉井は、らしくない大人な表情でニコっと笑って言った。


「頑張れよ」 って。





また教室を後にする。


横浜へ行くっていったって、鍵は辻之内が持っているんだから住所だってわかんない。


それでもあたしは走った。


“急ぐしかない”


ただ、いまはそれしか頭に浮かばなかった。