だんだん近づく距離 ――


堂々としてるのなんて無理で、下を向いた。



そのまま一歩、二歩、三歩………




―― あたしの横をやわらかな風が通り抜ける。



微かに残る香り。


優しい気配。



でも、



やっぱり避けられた。




怒ってるわけでもなく、戸惑ってるわけでもない。


彼はまるで、あたしのことなんて見えてないみたいに

まるで、あたしのことなんて知らないみたいに


ひとつも躊躇することなく、通り過ぎて行った。



思い知らされる現実。


鼻の奥がツンとした。


顔を少し上に傾けて、また一歩前へ足を踏み出した。