「図書室は?」
「いなかった」
「んじゃ、音楽室は?」
「そこもいなかった」
「じゃあ……うらに ──」
「裏庭も非常階段も辻之内がいそうなとこ全っ部探したけど、何処にもいなかったの!!」
息継ぎなしで一気に言い放ったあたしの顔を、たじろぎながら覗きこむ吉井。
「まぁまぁ湊ちゃん、そんな怒んなって?」
あたしの頭を軽くポンポンってした手を払い除けた。
「怒るな? これが怒らずにいられますかっていうの!
今日の日直はあたしだけじゃないの。辻之内もなんだよ? なのに黒板拭きだって日誌書くのだって、いっつもあたしにさせてばっかりで!」
興奮し過ぎて酸素不足になりそうだよ。
辻之内 葵 ── その甘すぎるルックスと恵まれたスタイルの良さで “王子” なんて呼ばれてるけど。
校内を歩けば居合わせた女子生徒達をたちまちポーっとさせちゃうけど。
でも、ちょっとマイペース過ぎで協調性なさ過ぎなんだよね。