リカを乗せたバスを見送ったあとで、あたしはなんとなく気まずい想いを抱えながら歩きだした。
自転車を押しながら横に並んだ林田くん。
彼も黙ったまま、ただ前を向いて歩いてる。
「今日は歩きじゃないんだね?」
“なにか話さなきゃ”そう思って口にした、他愛もない言葉。
「あっ うん。ホントは基本、チャリ通なんだ」
「そうなんだ。家、遠いの?」
「まぁまぁ遠いほう」
「ふーん。あたしなんてずっと徒歩通ばっかりだから、チャリ通とかリカみたいなバス通とか、電車通とかちょっといいなって思うん――」
「時田」
急に遮られた言葉。
歩くのをやめた彼の顔を伺い見る。
「林田くん……どうしたの?」
いつもは普通顔が笑顔な林田くん。
でも今は、怒ってるような困ってるようなそんな顔してる。