覆い被さるようにナカジーの顔が近づいて。


必死に、掴まれてる手を解いて顔を背けると、こめかみの辺りに彼の口がぶつかった。



「そんな逃げんなって」


狭い非常階段の踊り場。

下を走る車の音と低く囁かれた声が重なる。


「やだっ」


今度は手首を掴まれて引っぱられた。


無理矢理、引き寄せられる体。


抵抗して体をよじると、背中にぴったり密着されて。

骨ばった指が胸の上を這っていることに気づく。



どうして、こんなことっ ――



逃げようとしても今度はさっきより力が込められていて。

やっぱり男の力には適わない。



誰かたすけて ――



自然と辻之内の顔が頭に浮かんだ。