「時田は、なんか歌わないの?」



隣に座ってる林田くんに話しかけられて、ふと我に返った。


この前と同じカラオケボックスに来ていた。


前に出て熱唱するナカジーと、その姿を見守るように見つめるリカがいて。


あたしはそんな二人の姿を交互に眺めながら、ぼんやりするばかり。



「つまんない?」


心配そうな表情の林田くんに尋ねられた。


「ううん。そんなことないよ」


林田くんは、よく気をつかう人。

メールの文章にも、そういう性格がよくあらわれていると思う。


「ちょっとごめんね」


トイレへ行くため席を立った。