教室へ行くと今朝のことがちょっと話題になっていて、みんながコソコソと話しているのがわかった。
遅れてやって来たリカも何か言いたげな顔をしたけど、あたしに訊いてくることもなく。
ただ遅刻ギリギリに登校してきた今井さんだけは、あからさまに不機嫌にしてる辻之内の様子に鈍感で。
ベタベタと付きまとって大きな声で話しかけていた。
「ねぇ~ あの幼なじみって、いっつも家に来てるわけじゃないでしょーね?
この前なんて、せっかくお見舞いに行ったのに玄関で追い返されたんだよー、アタシィ」
唇を尖らしてみせるけど、辻之内は顔さえも見なくて。
“この前行った”というのは学校を休んだ日かな。
今井さんも行ったんだ、辻之内の家に。
「まさかずっと日本にいるわけじゃないんでしょー!?」
「ねぇっ?」ってしつこくシャツを摘まんで揺さぶる今井さんに、辻之内は深いため息をついてから。
「帰るよ、もうすぐ」
ってボソッと呟いた。
その答えに、マジでー!!?って喜ぶ今井さん。
彼女の友人達も、それを祝福するみたいに手を握り合って。
その光景に目を逸らし、あたしは黙って外を見た。