未熟な天使 *恋と心理学と彼とわたし*

「おはよ」



久しぶりに目の前で向けられた笑顔に、固まってしまった。


いつの間に来てたんだろ ――?



辻之内は、自然な感じでリカを追い越してあたしの隣に並んで。

そして後ろを向いて言った。


「尚太、なんの話してたの?」


振り返った反動で、彼の香りが運ばれてくる。


「それがさ、湊ちゃんが足ケガしたんだって。
そんで『ダレか、アタシをおんぶってぇー!!』なんて言うから、俺が立候補してたとこ」


「なに言ってんの!? そんなこと言ってないでしょ!!」


吉井のことを睨みつけると。


「ケガ?」


辻之内が、テーピングを巻かれたあたしの足首に視線を落として尋ねてきた。


「……ちょっと捻っただけ。たいしたことないの」



久しぶりに交わす会話に、不覚にもドキドキしてしまう。


忘れたいとか、好きにならなきゃよかったなんて、思ってるくせに。


あたしってば、単純っていうか……我ながら呆れてしまう。