玄関で靴を履き替え、階段へ向かう。
「湊ちゃん、階段ってムリくさくない? やっぱりおんぶっちゃう!?」
「ホントいらないから。問題なく上れちゃいますんでっ」
わざと冷たく言ってやる。
「でた~!! ツンデレ!
あっ でも、やっぱ俺は下で見てよっかな。湊ちゃんが階段上がってくとこ」
「吉井、なにそれ。階段の下から湊のスカートの中を覗くつもり?」
怪訝な顔を向けるリカ。
「リカちゃん、人聞きが悪いな~。俺はただ、おんぶ役は葵に任せて、サポート役にまわろうかと」
いつまでもフザけた発言に付き合ってらんない。
さっ 教室へ行こーって思って上げたつま先を、階段の一段目に乗せたまま立ち止まった。
それは思わず聞き流した会話の中に、ある単語を見つけたから。
どうしていま、辻之内の名前を出したの……?
そう思いながら振り返る。



