「俺と手つなぐの嫌かもしんないけど、ひとりじゃ歩けなくない? だから、ちょっとの間だから我慢して?」


遠慮がちな目を向けてくる。


親切にしてくれてるのに、こんな態度はいけない。

それに、捨てようとした想いにしがみついてても……ダメだよね。



「嫌がったわけじゃないの。そんな意味じゃなくて……なんか、ごめんね」


ゆっくりと右手を伸ばし、彼の手に乗せた。


「じゃあ、ゆっくり立つよ。いい?」


林田くんがもう片方の腕であたしの体を支えてくれて、ゆっくりと立ち上がることができた。



片足を引きずるようにしながら歩く。


手を添えられ肩を並べながら、いい人だなって思った。

だけど、思いながら悲しい気分にもなった。


辻之内と手をつないで歩いた日の思い出も、その跡も薄れていくように思えたから。

辻之内の温度を感じた記憶が、消えていってしまうんじゃないかって思えたから。


こんな気持ち、邪魔なのはわかってる。

自分でもしつこいって思うんだ。