「………」

「………」


気まずい沈黙が流れる。



「……そんな嫌だったら無理にとは言わないけど」


って彼はおんぶの姿勢をやめて、しゃがんであたしと向き合った。



『いや』と言ったのは、『嫌』って意味じゃなかったんだけど。


さっき、すごい勢いで拒絶しちゃったよね?


悪いことしたなって思うけど、でもやっぱり“おんぶ”はできないよ……。



すると、

「じゃあ、はい」

目の前にスッと差しのべられた手のひら。


「………」



立ち上がれないくせに、ここでまた拒むなんて感じ悪いよね?

それはわかってる。


手を繋ごうってわけじゃなくて、足を痛めたあたしに手を貸してくれようとしてる。

それもわかってる。


でも、この手は……


何度も何度も、誰かの温もりを感じた手で。


二人で行った遊園地や、並んで歩いた並木道を思いだしたの。


夏休みの、あの体温を思いだして

だから躊躇してしまったんだ。