「えー。湊ちゃん、俺等と帰るんじゃなかったのー? 」


吉井が、わざとらしい駄々っ子みたいな素振りで言った。


「え?」


思わずそんな声が漏れた。だって、まさかそんなこと言われるなんて思ってなくて。


「あたし、友達と帰るから……」

「何それ。それじゃまるで俺等とは友達じゃないみたいじゃーん」


そんなこと言われたって、あたし達、今日初めて話したわけでまだ友達っていうほどの仲でもないのに……。

返す言葉に困って視線を泳がせたら、吉井の後ろにいる辻之内とまた目があって。


「尚太、今日は諦めたら? また今度誘おうよ」


あたしと視線を合わせたまま吉井に言った辻之内。
そして笑ったの。

それは、笑うっていうより微笑んだって感じの──フワフワっとした柔らかな笑顔。

なんか目眩まで起こしそうになる。

本人は無意識なんだろうけど……そんなものをあちこちで振り撒くから、暗示にかかっちゃう女子がいっぱい居るんだから。