「ね、王子は?
辻之内はどうなの? 彼女とか」
「え」
リカの突然な振りに、玄関扉に手を掛けていた辻之内 葵が振り返った。
少しだけ開かれた扉の隙間から舞いこんだ春風に吹かれて、色素の薄い髪がサラサラと揺れる。
── キレイ……
その姿に思わず見惚れた。
“キレイ” だなんて、男である彼のことをそんな風に表現するのは変だけど、でもやっぱり思ったの。綺麗だな、って。
そうだな。例えていうなら天使、かな?
ん ──……天使?
そうだ。
辻之内って確か“王子”ともう一つ、入学当時に女の先輩達から付けられてたあだ名があったよね。
それは ── “エンジェル ボーイ”。
なるほど。天使みたいに美しい、ってことか……。
って、
何を納得してるんだ、あたし。