「例えつり橋があったとしても、実験に参加してくれる人がいないでしょ? それに誰がつり橋に立つの?」
「もちろん時田に決まってるじゃん」
「あたしじゃダメだよ。あれって“魅力的な女性”って条件じゃなかった? 魅力的って綺麗ってことだよ。あたしよりむしろ辻之内が──」
「魅力的だよ」
「へ?」
辻之内は時々、突拍子のないことを言いだす。
「魅力的だし可愛いよ、とっても。
つり橋の真ん中に立っているのが時田で俺が被験者だったら、渡された番号にその場でかけるよ、きっと」
とんでもないことを真顔で話すからリアクションに困っちゃうし、どうせからかうのなら笑いながら言ってよね。
並んで座る辻之内に見られないように、赤くなった顔をそっと背けた。



