揺れる電車の窓から、流れる景色を見ていた。


「時田、前に説明した “つり橋効果” って覚えてる?」

「ひとつのグループではつり橋を渡る前に、もうひとつには渡ってる途中に、女のヒトが『連絡をください』って番号を書いた紙を渡す、ってやつでしょ?」

「実験結果は、渡ってる途中に渡されたグループの方が電話をかけてきた割合が多かった」

「それがどうしたの?」

「やってみる?」


辻之内は時々、突拍子もないことを言いだす。


「研究発表なんだからただレポートを書くより、ちょっとした実験くらいやったほうがいいかなって。
いま向かってる場所も結構田舎だし、探せばあるかもよ、つり橋」


探せばあるかもよって……つり橋なんて、ちょっと探したくらいで見つからないでしょ?

有り得ないようなことを淡々と言うから、冗談なのかもわかりにくい。