「どうかした?」
肩肘ついた姿勢で「ん?」って顔してる辻之内の視線とぶつかった。
……もうっ、なによー。
その眩いばかりの微笑は?
美し過ぎるポーズは?
計算し尽くしたような、その顔の角度はー!?
「べ、べ、別にっ。どうもしてない、けど?」
うわっ。
あたしってば動揺しすぎだってばっ。
どもったりして “どうもしてなくない” 感、満点だから。
と、取りあえず落ち着こうよ……と席に着く、と──
ガタッ!
……え?
間近でした物音に恐る恐る顔を向けると ──
な、なんということ!
辻之内 葵が、座ったまま椅子ごと動いて距離を縮めてきたの。
って……ち、ち、近ーっ!
これじゃ席替えまでどころか古文の授業が終わるまで、あたし、もたないかもしんない……。