窓の外、散ってはチラチラと舞う桜。
「阿部」 「はい」 「安藤」 「はい」
教壇の上では、担任のキジモンこと雉本が出席を取っている。
「井上」 「はい」 「大久保」 「ハーイ」
キジモンと男子生徒の声が交互に耳に入ってきて、なんだかそれがとってもリズミカルで眠気を誘われる。
「小野」 「ハイッ」 「神埼」 「はい」
ここは2年6組。
あたしは昨日で高2になった。
「木村」 「はい」 「近藤」 「ヘイッ!」
お調子者の男子の返事の後に起こる笑い声。
「斉藤」 「ハイッ」 「佐藤」 「は~い」
「ハッ(アァ~ア)──」
思わず出た欠伸を隠すため両手で口を押さえたら、涙が滲んだ。
それにしても春はやっぱり眠たいやぁ……。
「高橋」 「はい」 「辻之内」 ──
……………。
「辻之内ー?」
リズミカルだった旋律が
── 突如、崩れた。