鼻の先が触れ合った。


もう、有り得ない位に近づいたお互いの顔に、正気になると、今にも触れそうな唇。


ビクリと反応した指と、戦く身体。


なんとか手を動かし、少し加減して志島君の頬を叩いた。


パンッ!! と軽い音が鳴り、反動で志島君の顔も叩いた方向に振れる。



「―――ぁ、……は……、」


息が荒い。ドキドキと緊張する心臓に、酸素がどんどん送られてく。


固まったように動かない志島君が口を開いた。


「―――………かのん、どうしておれをうらぎったの………?」




殆ど呼吸と変わらない程に微かに聞こえた声に、私は背筋が凍った気がした。