一見、すっかり国王らしく立派になっていたローレンだが、時々見せる狂気の表情は、誰も気づいていないようだったが、誰よりも親しい肉親よりも互いを理解し合っていた親友だからこそ分かることのできる、ほんの微かな精神の乱れを、私は彼から感じ取っていた。


そして、私は妙に彼が心配になり、彼の様子を知るために、その力で運命を見ようとした。


私は滅多な事では例の力を使う事はなかったのだが、エルミラーラの侵した罪も、全てエルミラーラと彼を引き合わせた、私の責任だったから・・・・・、事の全てを知っている私に、闇色の不安が襲ってきて、このまま彼は狂い死にするのか、という言い伝えが私を不安にさせ、残した不安がどうしても消せなくて、まさか、意志の強いローレンに限って“気が狂う”なんて事があるはずがない、と思いつつ、その反面、彼の事が心配でたまらなくなり、つい彼の運命を覗き見してしまったのだった。


その時に私に見えたものは何もない。

唯、真っ赤な・・・・・、まるで血の色にに染まった色だけが見えただけだった。


その赤いヴェールの向こうで何が起きるのかは分からなかった。今思えば、それは彼がすでに正気ではなかったからなのだろう。しかし、その赤いヴェールが何を意味しているのかくらい私にもわかった。近い未来、悲劇の幕が降りる。と――